前代未聞の10連休。日本最大の羽田空港では人で溢れかえっている。
今さら説明は不要かもしれないが、羽田空港には3つのターミナルがあり国際線ターミナル、国内線第1旅客ターミナル(以下T1)、国内線第2旅客ターミナル(以下T2)が存在する。T1は主にJALグループ、T2は主にANAグループが発着している。
以前から気付いていたのだが、T1とT2の違い(というかJALとANAの違い)について2点ほど気になったことを書いてみる。
余談だが、2019年4月28日の午前中、手荷物預け入れの行列は以下の写真ぐらいだった。これがどの程度なのかはわからないがT1で列が3回くらい折り返すほどの行列を体験したことがあるので、まだ良い方かもしれない。
違いその1 手荷物預け入れ方法
という事で、1つめの違いが手荷物預け入れの手順である。
JAL
ラベルの発行と取り付けを顧客自身で行い、最後に有人カウンターへ預ける方式
- 専用端末で搭乗券をかざす
- タグを発行する(複数枚同時発行可)
- 手荷物にタグを取り付ける
- タグから手荷物引換証をはがす
- 有人カウンターへ預ける
- スタッフが手荷物をベルトコンベアへ流す
ANA
ANA BAGGAGE DROP(自動手荷物預け機)のご案内 | ご旅行の準備 [国内線] | ANA
こちらはスタッフが一切介在せず、すべて自動で行う
- マシンに手荷物を置く
- 搭乗券をかざす
- タグを発行する(複数枚同時発行不可)
- 手荷物にタグを取り付ける
- マシンの扉が閉まり手荷物引換証を受け取る
- マシンが手荷物をベルトコンベアへ流す
- 手荷物が複数ある場合は1から繰り返す
双方の特徴
簡単に特徴をまとめると以下の通り。
こうして見ると、サービスの運用開始タイミングは近いにもかかわらず、双方異なるアプローチをしていることがわかる。
運用開始 | 預入時間 従来比 |
台数 | 特徴 | |
---|---|---|---|---|
JAL |
2015/3/31 | 1.5倍 | 10 | ・一人あたりの預け入れ時間を短縮することで混雑緩和 ・タグの複数枚同時発行可 ・タグと手荷物引換証は同時発行 ・結局スタッフは介在する |
ANA | 2015/7/1 | 1.0倍 | 39 | ・マシンにより実質的にカウンターを増やすことで混雑緩和 ・タグの複数枚同時発行不可 ・タグと手荷物引換証は別々に発行 ・カウンターのスタッフを減らせる |
ぱっと見だとANAの方が全自動で優れているように思えるのだが、JALはコスト削減の観点ではなく、顧客の利便性向上と効果検証が目的との事。
どちらも一長一短
JALの残念なところはラベル発行の専用端末の少なさと配置場所。
混雑時は端末の前に大行列ができるのだが、配置場所を分散させれば混雑を緩和できるのではないかと思う。
例えば地下1階の京急・モノレールを降りたところなんかは空間に余裕があるし、タグを発行するだけなら出発ロビーでなくてもいいはず。まぁB1はJALの敷地ではないのでしょうが。
一方ANAが今以上に混雑を緩和するにはマシンのスピードを上げるか、マシンの台数を増やすかという二択しかない。
スピードを上げるにはマシンの入れ替えが必要だし、台数を増やすにはスペースの上限があるのが悩ましいところだが、チケット購入機を減らせばまだ増やせるか。
参考:
JAL、手荷物を1.5倍速く預けられる「JAL エクスプレス・タグサービス」を3月31日開始 羽田空港 国内線第1ターミナル 手荷物預けの混雑解消へ - トラベル Watch Watch
違いその2 「ご搭乗案内」用紙の発行タイミング
2つめの違いは飛行機に搭乗するまでに受け取る用紙の枚数が異なること。
JALが1枚、ANAが2枚だ。
JAL
- 保安検査場を通過する際に受け取る白色の「ご搭乗案内」
ANA
- 保安検査場を通過する際に受け取る黄色の「保安検査証」
- 搭乗ゲートで受け取るピンク色の「ご搭乗案内」
ANAの用紙が2枚ある理由
2016年に発生したトラブルにより国土交通省から受けた厳重注意に対する再発防止策の対応のようだ。そういえばそんなニュースあったなぁと。
「同時に予約・発券した2人連れのご家族が、誤って2人様とも携帯端末に同じ二次元バーコードをダウンロードした」(安全推進センター)
同社によると、家族連れは40代と10代後半の父子で、父親が自身のバーコードを使って保安検査場を通過した後、子供が父親のバーコードを使って通過を試みた。また、搭乗ゲートでは子供が先に、父親が続いて通過しようとした。データは父子の区別ができないので、ともに同一人物が通過したと判断した。
「保安検査場ではエラーを示す用紙が出力されたが、保安検査員が適切な手順によらず、(個人的判断で)搭乗手続き済みの二度かざしと判断し、保安検査を実施して通過させた。また、搭乗ゲートでもエラーが表示されたが、地上係員は二度かざしと判断してしまった」
改めて読んでみるといろいろ突っ込みたい部分はあるのだが、こういう凡ミスがきっかけで運用がどんどん複雑になっていくのはよくある話。
とはいえ同じような事が書いてある用紙を2枚も受け取らないといけないのは正直めんどうだ。
せっかくのチケットレスなのにやたらと紙が増えるのはスマートではない。
空港全体としてどうなのか
以上、2つの違いを挙げてみたが細かい点では他にもあるだろう。
各航空会社がそれぞれ工夫を凝らし、改善を繰り返していくという点では素晴らしいと思う。
ただ一方で、ひとつの空港として見たときにバラつきがあるのはどうなんだろうとも思う。
今回の2点はいずれも空港を利用する上での基本的な体験の部分だ。
1つめの手荷物預け入れサービスについては両社とも2015年という同時期に運用開始しているものの、アプローチ方法が全然違う。
2つめのご搭乗案内の用紙についてもなぜJALはやらなくて大丈夫なの?という疑問が残る。
おそらく国土交通省が各社に「改善よろしくね」で投げて、各社がそれぞれ独自で対応しているからだろう。
空港とはこうあるべきだという全体の統括者がいないのだ。
もちろん国土交通省はそんな細かいところまで気にしておらず、顧客目線とは程遠い場所にいるのは言うまでもない。
さいごに
最後に無茶苦茶かもしれないが案を出しておくと、羽田空港のT1とT2を10年単位ぐらいで入れ替えるというのはどうだろうか。
現状をベースにするとT1(ANA)、T2(JAL)に引っ越しをする。
最初の引っ越しでもの凄く苦労するので、次回からお互いベースラインをある程度合わせませんかという話が発展する・・・みたいなことを想像してみる。