今や大手の鉄道会社は自社の公式アプリを出していて、列車の位置情報サービスを公開しているしているのも珍しくなくなってきた。
その中でJR東日本の山手線だけ(全部調べたわけではないのだが)が少し特別な機能を搭載している。
車内の情報がわかる山手線トレインネットというものだ。
山手線トレインネットとは
これ自体は目新しいサービスではない。2011年10月4日から1か月ほど試験運用されて、2014年3月10日にリリースされたもので、JR東日本アプリから利用できるサービスだ。
左)アプリの列車走行位置メニューを開くと路線の一覧が表示される。山手線だけ(トレインネット)というスペシャルな文字が。
右)位置情報は特に普通なのだが、車両のアイコンをクリックすると車内の情報が表示される。新型車両増えたな・・


こんな感じでリアルタイムで混雑状況が5段階で表示される。車内の室温も表示されるので夏場はありがたいかもしれない。
ただ、このような混雑状況や室温の情報は持っているのは山手線だけではない。
他の路線や会社でも乗務員室のモニタで確認できるのがほとんどだろう。山手線トレインネットはその情報をアプリ使って一般に公開したということだ。
実際に乗るときこの機能を使うだろうか?
とても良い情報だと思うのだけど、冷静に考えるとこの機能を使うシーンがあまりないような気もするのだ。
乗車前
10分後の電車ならまだしも、2~3分間隔で走る山手線の位置をわざわざクリックして自分から情報を取りに行くというのが面倒。
もしかしたら車椅子やベビーカーの利用者が使うかもしれないけど、車椅子の場合は駅員がアテンドするケースが多いし、どちらの場合でもスマホを操作するのは危険なはず。乗車後
車内が暑い(寒い)という理由で車両を移動したくなるケースだろうか。ただ、山手線の混雑率や停車時間を考えると車両の移動は難しいと思うので、利用頻度が高いとは思えない。
結局、自分から取りに行くタイプの情報じゃないように思えてしまう。ホームや車内に表示したほうが良いんじゃないだろうか。
ホームに表示すれば混雑が分散するか
よく聞くアナウンス、説得力はあるか
よく、駅のホームでこんなアナウンスを耳にする。
「階段付近は大変混雑いたしまーす。先頭か後方の車両をご利用くださーい」みたいな。
実際、効果があるのかどうかわからないが、この言い方は鉄道会社側の都合が強いという印象を受けてしまう。
「事故が起きると乗務員や車両のやりくりが大変だし、ダイヤが乱れると振り替え輸送もコストがかかるから、分散してよ~」という心の声が聞こえてくる。
どちらかといえば、「1号車が空いてて涼しくて快適ですよ」という情報の方が乗客としても動きやすいのではないだろうか。
2本先くらいの電車の情報が表示されていれば「後続の電車もご利用くださーい」というアナウンスにも説得力が増すだろう。現状だと「どうせ次の電車も混んでるんでしょ」と思ってしまうのがお決まりだ。
そういう意味でもホームに情報を表示したほうが混雑分散に寄与する価値があると思うのだ。
(もちろんホームのどこに表示するんだという問題はある。ホームドアの柵にモニタを埋め込むとか、線路と水平に屋根から吊るすとか・・・)
AIとの組み合わせは
なお、JR東日本アプリの中に山手線混雑統計情報という実験中の機能がある。時間帯と駅間ごとの混雑率の統計が見れるというものだ。
この混雑統計情報とトレインネットのリアルタイム混雑情報、ホームの階段の位置などを組み合わせて、おすすめの乗車位置をAIがはじき出してホームに表示するといったこともできると思う。
まとめ
冒頭で記載したように山手線トレインネットはリリースして5年以上経過している。にもかかわらずあまり活用できていないように思える。未だに山手線でしか実現できていないのももったいない話だ。
結局のところ、どんなに良い機能だとしても人目に触れなければなかなか価値が生まれにくい。ということがわかった気がする。
一方でラッシュ時はこんな状況なので・・・混雑の分散では焼け石に水なのかもしれない。
もっともこれは鉄道会社だけではどうしようもないので、また別の問題だ。
東京オリンピックで来日した外国人がこのような状況を目の当たりにして
「日本人はやっぱりクレイジーだ」
と思うのだろうか。