現在、LINE Payが300億円バラマキ中といまだに過熱状態のキャッシュレスキャンペーン。既にキャッシュ慣れしている人にはありがたい話ではあるが、キャンペーン本来のターゲットである現金メインの人たちに響いているのだろうか。
以下の記事は、高校生、大学生を集めてキャッシュレス決済についての座談会を実施したものだ(前編と後編に分かれている)。
個人的に普段関わりがない年齢層なので、どう思っているんだろう?と興味本位で読んでみたが、中々的確なところを突いていて面白いと思ったので、部分的に引用して感想をコメントしていこうと思う。
前編
高校生の普及率
部活メンバーの40人中、使ったことがある人は3、4人というところです。それも「PayPay」の初回登録でもらえる500円が目当てで、それをもらうために一回使ったら終わり。アプリをアンインストールまではしないけど、その後もQRコード決済を普段使いしている子は1人もいなかったです。
おそらく学生に限らずキャンペーン参加者の大半は一回使ったら終わりではないだろうか。事業者側としては試供品を配っているようなものなのである程度想定済みだろうが、その試供品すら受け取ってもらえないというのが現状。
ふつうに現金で500円玉くれると言ったら喜ぶと思うが、キャンペーン参加数が少ないのは何かしらの障壁があるかだろう。
大学生の普及率
バイト先や遊び友達13人に聞いてみましたけど、QRコード決済を使ったことがあるのは1人だけでした。私自身はPASMOを必要な時にチャージして使うだけで、他のキャッシュレス決済は一切やってません。クレジットカードすら持ってないんです。浪費家なので、親に作るのを止められていて。
クレジットカードが無いというのはひとつの障壁だと思う。 大学生のクレジットカード保有率については、カード会社公式のデータは無く調査機関によってバラつきはあるが、概ね半分強ぐらいといったところだろうか。
大学生のクレジットカード所持率は54.0%! おすすめのカードの選び方とは? | 学割・大学生お得情報 | 貯金・節約 | マイナビ 学生の窓口
QRコード決済以外のキャッシュレス決済について
友人はコンサート会場でグッズを買う時は、ちゃっちゃと買い物を終わらせたいから交通系のICカードを使うそうです。出かける前に使う分だけチャージしておいて。
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あとは、コンビニで少額の買い物をする時もキャッシュレスです。小銭を出すのが面倒なので。これも交通系ICカードです。
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高校生はお金がないので、遊ぶ予定がない日は学校に行く時に定期入れに1000円札とSuicaだけを入れている人が多いと思います。1000円札はもしもの時のためだから崩したくない。だから、Suicaに少額だけ入れて、コンビニではそれを使います。
QRコード決済ばかりが盛り上がっているが、交通系ICカードはそれなりに生活に根付いていそうだ。ICカードは持っていても電子マネーとしては使っていないイメージがあったが、高校生でもふつうに使っているということだ。
ICカード決済に慣れているがゆえに、QRコード決済の面倒さが障壁になっているとも言える。
初期導入のハードル
今回の座談会の機会があったので、初めて「LINE Pay」をやってみようと登録してみたんですけど、設定・入会・ログイン手続きがけっこう面倒くさかったです。この機会がなかったら途中であきらめちゃっていたかも。
デジタルネイティブ世代でこの意見だと、上の年齢層には当然もっとキツいはず。
初期導入時はアプリ側の登録だけでなく金融機関側の認証も必要なので、アプリとブラウザをたらい回しにされるところだろう。はじめに全体のステップを簡単に把握できればよいのだが。
事業者の信頼性
あ、でも「LINE Pay」をやらない理由として、「LINEという会社をいまいち信用してないから」という人がいました。
こういう発想があるんだな・・LINEでこの言われようだと結構厳しい。
とはいえ根拠のない噂や憶測がベースだったりするので、ある種、人気就職ランキングに近いものかもしれない。安定的な大企業(ドコモとか)が有利なのだろう。
現場の苦悩
私、あるファストフード店でバイトしてるんですけど、「PayPay」にしろクレカにしろ、店員の立場からするとキャッシュレス決済って超めんどくさいんですよ。レジは基本的に現金支払いの設定になっているので、いちいち設定を変えなきゃいけない。正直、100円くらい現金で払えよって思っちゃいます。
設定変更の部分はよくわからないが、現金使用率が高い地域だと電子マネー用のリーダに電源が入ってなくて初回エラーになるケースが良くあるが、その話だろうか。
コンビニとかでも決済方法が多すぎて、マイナーな決済手段だと店員が戸惑ったり、「エディ」と「アイディ」を間違えたり、判断が必要になる部分は負荷になっているのかもしれない。
決済音
レジで「PayPayで」って言うのが、そもそもすっごく恥ずかしいです。まだ言葉自体が浸透していないから。
「WAON」を使ったときに「ワオーン」の音が鳴るのも恥ずかしいです。
さすが学生はこういうところに敏感だ(笑)。
こういうのは最初の決定がその後の運命を左右する可能性があるのでよーく考えるべきだ。
個人的には「QuicPay」の言いづらさと何言ってるかわからない決済音はなんとかしてほしいが。
後編
「キャッシュレス派」の特徴
キャッシュレス派、特にQRコード決済やプリペイドカードを好む人の特徴は、①小銭が増えるのを嫌う人、②会計を早く済ませたい人、③現金の盗難を警戒する人、④お金遣いが荒い人ですね。
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キャッシュレス派は「面倒くさがり」が多いと思います。小銭をいちいち数えたくない、リュックからいちいち財布を出したくないという声がありました。そういう人はプリペイドカードもいちいちチャージするのが面倒だからオートチャージにしたり、クレカと連動させたりしていますね。
キャッシュレス派の自分と比較。①②はその通り。③は特に意識してない。④は微妙だが、キャッシュレスだとレジで合計金額をあまり意識しないというのはある。これはクレジットカード所有しているか否かだろう。
「面倒くさがり」はその通りで全部当たっている(笑)。チャージという行為が発生する決済手段は基本的に選択肢から外れる。
「現金派」の特徴
一方の現金派は、①家計簿もノートに記入するようなアナログ好き、②デジタルをそもそも信用してない人、③お金の使い方が慎重な人、④新しいものより使い慣れている物を好む保守的な人、という感じです。
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あとは、現金派には、「そもそもクレジットカードを持っていない人」も含まれると思います。
やはりクレジットカードが分岐点になっている。
クレジットカードは国民全員が持てる訳ではないので、最近やたらと事業者がデビットカードやプリペイドカードを乱発しているのは当然の流れだろう。
銀行口座がない
私たち高校生の場合、クレカどころか自分の銀行口座すら持ってない子も結構いるので、完全キャッシュレス派はゼロです。現金チャージという方法もありますけど、チャージするほどそもそもお金がないですし、こまごまチャージするのも面倒くさいので。
銀行口座がないっていう人も結構いるのか。確かに定期的な収入がない限り銀行口座はなくても困らない。
そうなると口座も不要なプリペイドカードしか選択肢がなくなってしまう。プリペイドは交通系ICカードで既に使っているがチャージが面倒というループに・・・
キャンペーンの魅力
私としては「20%還元」って言われるより、直接モノがもらえるとか、わかりやすく「500円くれる」のほうが惹かれます。高校生は暇なので、サーティーワンのシングルコーンを無料で手に入れるために1時間とか並んじゃいますから(笑)。
これは学生らしいというか現実的というか。
還元=先にお金を使わないといけない。
還元を得るためにわざわざ消費をしてしまう財布の紐の緩い大人とは違うと。一方で時間は消費できる。
これはある意味、やり方次第で学生にプロモーションを担ってもらうことができるということだ。
締め?の一言
QRコード決済が普及しない一番の理由は、「登録がめんどくさい、めんどくさそう」に尽きると思います。めんどくさいから、やらない。やらないから仕組みも良さもわからない。わからないからなんとなく怖い。さらに周囲でもやってないから、余計にやる理由がない。
これですべてを物語っている感はあるが・・・
あくまで「QRコード決済」についての意見ではあるが、多かれ少なかれ初期登録の障壁が高いというのは共通の課題ではある。
まとめ
全体的な感想として、事業側と学生で向いている方向が異なるというのは理解できた。
事業側からすればお金を使ってくれる層をまずはターゲットにしたいという思いは理解できる。
一方で数年先に優良顧客になる可能性を考えれば、それなりに囲い込んでおきたい層だし、彼らの学習能力の高さと流行スピードの速さは無視できないはず。
最近のバラマキ祭りも、キャッシュレス派が様々なキャンペーンに乗っかって得をしている(自分もそう)のが現実なので、そろそろ違う方向のアプローチを期待したいところだ。
この座談会、中高年バージョンでもやってほしいと思う。