以前のエントリーでQUICPayが遅い理由について書いたのだが、検索からの流入がそれなりに多い。おそらくKyash、もしくはデビットカードの利用者がそれなりに増加しているのだと推測する。前回はiDについてあまり触れなかったが、メルペイやGoogle PayのiD対応で今後少しずつ利用者が増加すると想定されてるため、再度整理しておこうと思う。
iDの決済は遅いのか?
結論から言うと、前回のQUICPayでの検証結果と同様、iDも設定している支払い方法によって遅い場合がある。具体的にはプリペイド、デビットカードの場合は遅い。今回、iDでも同様に複数のパターンを試してみたので、まずは結果から記載していこう。
前提条件
- おサイフケータイ対応のAndroid端末にiDを設定する
- 同一店舗のレジでiD決済して支払い方法ごとの決済時間を確認する
- デビット、プリペイドの場合は残高が十分にあるものとする
ここではAndroidを前提にしてるが、Apple Payでも考え方は同じ。Apple Payに対応しているデビットカード、プリペイドカードはとても少ないので、遅いと感じるのはメルペイ利用者ぐらいなのではないかと思う。
パターンと結果
# | iDにリンクする支払い方法 | 支払い種別 | 結果 |
---|---|---|---|
1 | メルペイ(残高・売上金払い) | プリペイド | 約3秒 |
2 | メルペイ(あと払い) | クレジット | 約3秒 |
3 | SMBCデビット | デビット | 約3秒 |
4 | 三井住友VISAカード | クレジット | ほぼ一瞬 |
結果は概ね想定どおり。やはりクレジットカードはほぼ一瞬で、プリペイドカード、デビットカードは若干時間を要する。メルペイのあと払いがクレジットなのに遅いのはしくみを理解すればわかるので、詳細は後述する。
iDのしくみ
まず先に、整理した図から掲載する。概念を理解するための簡略的な図であって、実際には他にも細かい処理は行われている。中の人ではないので、あくまで個人の理解であることは承知して頂きたい。
概要図
決済時間のポイントは店舗の端末から先(つまり図の右側)、メルペイや銀行のシステムに残高を確認するための通信が発生するかどうか。上から4つめ、クレジットカードの場合は残高確認のための通信が発生せず、その場で完結するので決済が一瞬で完了する。
支払方法による処理の流れ
処理の流れを簡単に箇条書きで記載する。
なお、前回QUICPayで記載したものとほぼ変わらないが、オートチャージの記載は削除した。(メルペイは今のところオートチャージ非対応、SMBCデビットは即時決済なのでチャージという概念がないため)
前提事項
- iDはスマホ内部に残高の情報を持っていない
※参考までにスマホ(もしくはカード)内部に残高情報を保持しているのは、Suica、Edy、nanaco、WAONなどの機械にカードを入れてチャージするものが該当する。
プリペイドカード、デビットカード
- 決済時にチャージ金額、もしくは銀行口座の残高情報を確認する
- 購入金額が残高以下の場合は即時購入金額を引き落とす
クレジットカード
- iDはスマホ内部に与信枠(何円まで使ってよいか)の情報を持っている
- iDはスマホ内部に累積利用金額(今まで何円使ったか)の情報を持っている
- 決済時に「購入金額 + 累積利用金額 <= 与信枠」であればその場で取引が完結する(上図4番目)
- 決済時に「購入金額 + 累積利用金額 > 与信枠」であればカード会社へ与信枠の更新を依頼する
→スマホ内部の与信枠を更新、および累積利用金額を0円にリセットする(上図5番目)
メルペイは?
残高払いの場合は、プリペイドカードと同じ流れだ。残高はスマホアプリではなく、メルペイという企業のシステム上で管理されているので、決済時には残高を確認しに行く必要がある。つまりメルペイのシステムまでの通信時間が掛かるということ。
あと払いの場合は、クレジットカードと同じと思いきや、残高払いと同じだと推測する。理由は残高払いもあと払いも決済時間があまり変わらないからだ。メルペイのシステム上では「残高」をチェックするか、あと払いの「残枠」をチェックするかの違いしかないのだろう。
まとめ
結論は既に述べたとおり、プリペイドカード、デビットカード、そしてメルペイはクレジットカードと比べると遅いということになる。
これらを踏まえると、クレジットカードを保有している人が積極的にプリペイドやデビットを紐づける理由はポイント還元ぐらいしかない。逆に言えば、クレジットカードを保有していない学生などの若年層がキャッシュレスに手を出し始めても「遅くて使えない」という印象を持ってしまうジレンマを抱えている。むしろ数秒ぐらい気にせず待てるという心のゆとりが今の時代に必要なのかもしれない。